• TOP
  • 組織力強化
  • マネージャー組織再編成までの2週間|青山学院大学男子ラクロス部

マネージャー組織再編成までの2週間|青山学院大学男子ラクロス部

TOPICS
2019年05月22日

SHARE

この記事でわかること

・マネージャー戦力化への道のり
・ビジョンと目的と定義で組織が変わる
・チームを通じた自己実現

はじめに

私は現在青山学院大学男子ラクロス部にマネージャーとして所属している。
私たちは昨年度2部リーグにおいて全勝し1部との入替戦に臨んだが敗北。惜しくも1部昇格とはならず今年も2部リーグで活動する。
あの時、絶対1部に行けると思っていた。私が経験した3回のリーグ戦の中で1番チーム状態としてよかった。5戦5勝した勢いに乗って、最高のチームで最高の瞬間を味わえると思っていた。
けれど、行けなかった。
入替戦で1部との差を痛感した。1部の壁は想像以上に高かった。ベストメンバーをもってしてもその壁は超えられなかった。


そんななか始動した新チーム。
私はマネージャーリーダーとして幹部の一員となった。それなりに、チームのことを考えてたしマネージャー組織のことも考えてた。
つもりだった。


※【スタッフ向けイベント】青山学院大学元マネージャー木村さんが登壇するセミナーはこちら!

転機

2019/1/4(金)

この日主将から衝撃の一言を言われた。

「マネージャーなんていらない」

衝撃的だった。怒りで涙がこみ上げてきた。まじでこいつ何言ってるの、と思った。そんなことを言われるためにマネージャーをやってるわけじゃないし、自分なりに頑張っていたからすぐに反論した。タイム管理して、ビデオを撮って、ボール拾って、コーン置いて、練習グラウンドを予約して、部のお金を管理して、備品割り振って、ビデオアップして、他にもプレイヤーがプレーに集中できる環境を整えているのは私たちだよ、私たちがいるからみんな練習できているんだよ、って。

けれどそれでも

『それは"教えてもらえば俺らにもできる仕事"って言われた。


『マネージャーにしかできないこと、マネージャーだからできることって何?』と聞かれた。


『俺はもっとマネージャーに活躍してほしい。うちはマネージャーの人数が他大より多い。人数だけで言うなら関東1だと思う(当時21人)。だったらもっと何かできるはずだ。今の組織は誰にでもできることであってお前らがいる意味がない』と言われた。

それでも私は納得できなかった。お前は何も分かっていない、そこまで言うなら全部自分たちでやってみろ、と思っていた。

2019/1/6(日)

この日は今年度のマネージャー組織を幹部に共有するために幹部mtgに参加した。
私はあんな風に思っているのは主将だけだろうな、他の幹部はきっと分かってくれるだろうな、と思いながらmtgに向かった。

けれど共有し終わった時、幹部からは主将に言われたことと全く同じようなことを言われた。

「一部に上がれなかった去年と同じような体制で今年勝てると思うの?」

「今の体制って結局去年と何が違うの?」

「マネージャー甘すぎ」

「もっと一人一人が専門性を持って欲しい」

もはや何も反論できなかった。
あーみんなそう思ってたんだ、って思った。そしてここまでマネージャー組織に関与してくることに驚いた。
mtgの帰り道、1人で泣きながら帰った。

速攻で同期のマネージャーに「めんたるぼろぼろなう」ってラインして助けを求めた(笑)

実際のLINE画面

帰りの電車の中で大泣きしながらもこれからどうしよう、って考えた。

別に今まで何も考えていなかったわけじゃないし、それなりに色々話し合った上で新シーズン動き出していた。だからそれを崩してまで幹部の言うような組織に変えることは非常にリスクが高かった。出来るかどうか本当に分からなかった。

2019/1/7(月)

そこで同期マネの1人と直接話し合うことにした。落ち着いたのもあって一通り出来事を話した後、もっと早く外部に意見を求めるべきだったし、そもそもプレーヤーが何を望んでいるのかを確認せずマネージャーだけで動いてしまったことがよくなかったという結論に至った。そしてプレイヤーに還元できるマネージャーになろうということで組織を大幅に変える決断をした。

決断

この時の組織を大幅に変える決断、と言うのは今までは全体をマネージャーとしその中にいくつも小さな班(トレーナー班やビデオ班、スコア班など計15個ほど)が存在して各自が2-4班に所属していたものを、全体をスタッフとしそれを大きくマネージャー(MG)・トレーナー(TR)・アナライジング(AS)の3つに分け(この3つをユニットと呼ぶ)、ユニット間の兼業は廃止とするという決断だった。

旧スタッフ体制
マネージャーリーダー次期リーダー主務会計
トレーナー班スコア班備品班ビデオ班
渉外グラウンド班集客班グッズ班
SNS班合宿係新歓係育成班


つまり今までは全員マネージャー業を行い全員が笛を吹き、ビデオを撮り、スコアを取っていたが、そうではなく笛やビデオはマネージャー、スコアはアナライジング、筋トレ管理はトレーナーが管理するとし、自分が所属するユニットが担当しない仕事は行わない、というものだった。

この時、これは理想論だった。こうなれたらベストだけど実際には問題点はいくつもあった。以下は当時のメモである。

問題点

・そもそも本当に可能?会計や備品、SNS等各班に確認
・ユニットの分け方どうする?今までの仕事内容を加味して分けるとほぼ全て強制的にやってもらうことが決まってしまう
→例えばはるかは備品班を抜けられない、けどASやりたい。
 希望するものになれないことでモチベ無くならないか。
・じゃあ希望制をとる?
→希望が必ずしも通るとは限らない。引き継ぎ難しいものもある。非現実的では。
・TR、ASはグランドでのマネージャー業どうする?

2019/1/9(水)

このような問題点は残したまま、MG.AS.TRの3体制に分業することは決めたということをコーチと幹部に報告した。
私たちは幹部が求めていたものを実現するためにはどうしたらいいのかを考え、その実現に向け一歩踏み出そうとしたところだったから、その報告は受け入れられ"じゃあ頑張って"となる流れだと思い込んでいた。

けれど実際にもらった言葉は「結局お前らはどうしたいの?」というコーチからの言葉だった。

・旧体制、新体制どちらにも固執する必要はない。

・組織としてチームにどう貢献できるか、どうなりたいか

・“社会にどう貢献できるか、何を与えられるか”を考えて、旧体制のほうがいいのか、新体制にしたほうがいいのか、もしくは別の形があるのか。
・青学ラクロス部は5年後final4(ラクロスにおける日本一決定戦に残る上位4校)で戦うチームになる。
今決まったスタッフ組織でそれが実現できるのか?
実現できるスタッフ組織はどんな組織なのか。
このようなことも言われた。

そこで気づいたのは結局私たちが考えたのはただ言われたことを実現するための手段だった、ということだ。言われたことだけをただこなす今までと何も変わらない自分たちがいた。
目的や目標がきちんと定まっていないまま手段に先走ってしまったため軸がぶれぶれで、結局私たちの想いであったり、やりたいことが全く見えてこない、というものだった。

しかし、一方でこれからに向けたアドバイスもいただいた。

理想とするスタッフ像を明確化する
→チームを勝利に導けるスタッフとは?達成された時の状態は?
現状を知る
→理想を実現するために足りていないものは何か。一方で強みは何か。(→組織・人物・環境の3要素でそれぞれを考える)
今のスタッフ組織の位置はどこか
→チームとしては2部上位。スタッフ組織は関東ラクロス界のどこ?
理想と現実のギャップを埋める
→何をすることがベストなのか。組織・人物・環境の3つから考える。
 どんな問題があるのか、そして何にスポットをあてるのか。
スタッフ組織として今年1年で絶対に達成することを決め、やりきる

これらのアドバイスを踏まえて、私たちは組織の軸を固めるためにもう一度一から考え直した。

ビジョンと目的と定義

2019/1/10(木)〜15(火)

私にはもともとリーダーとして大切にしたい思いがあった。

それはせっかく体育会に入って、せっかく朝早く起きて練習に行ってマネージャー業務をこなしているのだから、どうせならこの部活に入ってよかった、4年間このラクロス部のマネージャーで本当に良かった、たくさんのものを得られた、とスタッフ全員に感じて欲しい。そして私がリーダーとしてそう感じられる組織を作り上げる、というものだった。

そこで軸としていたのが"楽しい組織を作る"という思いだった。

楽しさが原動力となる。

楽しさが個人の最大限のパフォーマンスを引き出す。

楽しさが向上意欲に繋がる。


とにかく、みんなに部活を楽しんでもらいたかった。

楽しんでもらうことが私のリーダーとしての使命だと思った。
そこで、まず、楽しいと感じる組織はどういう組織なのかを考えた。マネージャーという立場にいるからには少なからず「人の役に立っている」「自分が人に影響を与えている」という状態が喜びに繋がるのではないかと思う。つまり自分がこのチームにとって必要な存在であり、組織における自らの価値が高ければ高いほど楽しい、やりがいがある、と感じるのではないかと思った。
したがって私が求める「楽しさ」は組織と個人の「存在価値」を見出すことにより生まれるものであると考えた。

そこで次はチームにおいて存在価値のある個人・組織とは何であるのかを考えた。そもそも存在価値とは、"その存在を意義あるものとして認めるような、人や物事のもつ価値"のことである。

誰にでもできる仕事をこなすマネージャーなんていらない。今までと同じことをやっていたら意味がない。チームに必要不可欠な存在にならなければならない。

自分にしかできない仕事って何?
今までと違うことって何?
チームにとって必要な存在って?
それはプレイヤーが貪欲に求めている勝利に関わることなのではないか。もっと言ってしまえばプレイヤーが掴み取ろうしている「勝利」への先導者となることがこのチームにおいてのスタッフの価値なのではないか。

そして私たちは"チームを勝利に導く組織"となることがチームにおける最大の価値であるという結論に至った。

つまり私たちは、
「All Box Member」というチームビジョンのもと、
「楽しむ」という目的をおき、
そのためにマネージャー組織を「私たちはチームを勝利に導く組織」と定義づけ
その実現のための手段として組織改革を行った。

"定義"という言葉を使ったのは、これが組織の当たり前の姿であってほしいと思ったからだ。もちろんまだまだチームを勝利に導けるような組織ではないから現時点では目標にもなるが、そう定めてしまうと今年1年で終わってしまいそうで嫌だった。
ただの雑用として、皆のお母さんとして存在するのではなく、いつまでもチームを引っ張り、チームの勝利に欠かせない存在であって欲しくて組織を「チームを勝利に導く組織」と定義した。

手段

では具体的な組織改革の内容を記述していく。
私たちは改革において大きく4つのポイントを定めた。以下分かりやすく箇条書きとする。

1.権限委譲

1人1人が権限を持つことで責任が重くなる分大きなやりがいが生まれる。それが個人の最高のパフォーマンスの発揮につながる。
〈具体的な施策〉

・1.2年生をリーダーとして配置

2.専門性の向上

専門的な知識や技術を身につけることでチームにおける個人の存在価値が生まれる。また、代わりの無い役割を個人が担うことでチームにとって必要不可欠な存在ということを自覚できる。
〈具体的な施策〉

・TR、AS、MGの完全分業体制
・ユニット(TR.AS.MG)の兼任の廃止

3.ミーティング

組織全体で情報を共有し意見交換をすることにより閉塞的な意見・固定概念に縛られることを防ぎより良い案を生み出す。組織内のコミュニケーションを密に取ることで風通しのいい組織を作り出し信頼関係を築きあげる。
〈具体的な施策〉
・1週間に1回のmtg
1週目:リーダーmtg
2週目:スタッフファミリーmtg
3週目:スタッフ全体mtg
4週目:各班、各ユニットmtg

4.責任範囲の明確化

誰にどこまでの責任があり、自分はどこに所属しているのかを明確にすることで自らの存在意義が分かりやすくなる。また、組織の構造がわかりやすくなり各リーダーはコミュニケーションが取りやすくなる。
〈具体的な施策〉
・組織図の作成
以上の4つを軸に組織改革を行った。

最後に

マネージャーなんていらない、と言われたあの日から、人生で1番大変で、辛くて、忙しくて、頭を使う日々が続きました。夢でもスタッフ組織のことを考えてたし、ストレスで体調を崩した時もありました。

けれどあの言葉があったから今のままじゃダメだということに気づくことができて、その気づきから組織を変えるという決断をすることができました。

実は、今まで述べたことはもちろん実行に移してきましたが、それが全て成功に繋がっているかというと決してそうではありません。あれから4ヶ月ほど経ちましたが、今日まで本当に多くの問題が生まれ、今もその問題と日々格闘しています。

何か新しいことを始めると成功するまでに2年はかかる、とよく聞きますが本当にその通りだと思っていて、だからこそ大前提として物事はすぐには成功しないと思っておく必要があると思います。
夢→目標→計画→実行のなかでその結果は成功と失敗に分かれます。成功した時はナイス!って感じ(笑)
けれど失敗した時はそれについて反省をし、もう一度計画に戻り、再び実行に移せるかが鍵となってきます。PDSサイクルを繰り返せるかによって成功するかどうかが決まってくる。
成功者が成功の秘訣について、"成功するまで諦めなかった"と皆口を揃えて言うように、私自身も目的を見失わずに成功に向かって日々努力していきたいです。

最後に、私が1番伝えたいことは何事も「できるかできないかじゃない、やりたいかやりたくないか」ということ。

「今までやったことないからできない」
「やり方を知らないからできない」
「そもそも出来るかわからない」

そんなことを言っていたらきりがありません。
そうじゃなくて、それが必要で本当にやるべきことなんだったら、出来るかできないかで判断するよりやりたいかやりたくないかで判断をして、そこから実現するためにはどうしたらいいのかを考えた方が夢が広がりませんか?

是非、1つの判断軸として持っていただけたらと思います。

この記事を読んで、少しでも誰かの勇気になったり、行動のきっかけになったり、変化へのエネルギーになれたら幸いです。
また、青山学院大学男子ラクロス部の組織改革は現在進行形で行っています。
そして今に至るまで多くの課題や問題点が生まれました。それをどう解決・改善してきたのかも今後記事にしていく予定ですので、ぜひチェックしてみて下さい。


組織編成に関する他部活の事例

関西学院大学サッカー部

関学サッカー部がオンリーワンの強い組織を作るためにチームの目的をなくした理由

慶應義塾大学ソフトテニス部

陰口で味わったキャプテンとしての挫折と改善のための取り組み

青山学院大学ソフトテニス部

「みんなで勝てた」と言えるチーム作りへ- はじめての主将の挑戦-


※【スタッフ向けイベント】青山学院大学元マネージャー木村さんが登壇するセミナーはこちら!

SHARE

RELATED EVENT関連イベント

DOWNLOAD資料ダウンロード