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競技運営を支える学連スタッフが寄り添った大学バスケの風景

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2020年07月07日

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読んでくださっている皆さんはじめまして。私は大学4年間東海大学男子バスケットボール部から一般社団法人関東大学バスケットボール連盟(関東大学男子)/一般財団法人全日本大学バスケットボール連盟へ派遣学生役員として大学バスケの運営に携わり(2019 年 3 月卒) 、現在は男子プロバスケットボールリーグB.LEAGUEの“千葉ジェッツふなばし”というクラブでフロントスタッフとして働いている清野咲歩と申します。


大学スポーツを運営する際に欠かせない『学連』の組織と、現在の業務への紐付きを、私の体験をもとに2回にわたりご紹介できればと思います。



競技運営の全てを担う学連組織

私は、中学から高校まではプレイヤーとしてバスケに関わっていましたが、プレイタイムが少なく周りより外からバスケを見る機会が多かったため、逆に観るバスケの面白さにのめり込んでいきました。その中で、サッカーや野球に比べて観客が圧倒的に少ないということを感じ、裏方として純粋にバスケットボールの面白さをもっと多くの人に伝えたいと思うようになりました。そこで高校のバスケ部の顧問に進路相談をしたところで学連を紹介してもらい大学で学連に入ることに決めました。


関東・全日本ともに関わり、関東大学バスケットボール連盟では、選手権大会・新人戦・リーグ戦の年3大会を開催し、全日本大学バスケットボール連盟では日韓学生バスケットボール競技大会、そして学生バスケの頂点を決める全日本大学バスケットボール選手権大会(通称:インカレ)の企画・運営・準備をします。


学連は、関東男子連盟所属大学のバスケ部から派遣されたおよそ30名の学生で9つの部署(総務部、財務部、競技部、強化部、育成部、渉外部、広報部、審判部、医科学部)に分かれ、業務・運営を行なっています。


各部署により業務は異なりますが、大まかには大会に向けての会場確保、組み合わせ抽選会の実施、試合時間調整、試合当日には会場設営、撤収、チケット・プログラムの販売、メディア対応、チームエントリーなど大学バスケの試合を開催するのための準備・運営を全て行なっています。


私は、渉外部として大会プログラムの作成、大会協賛企業の営業、大会当日の広告管理を担当し、大会当日は受付でチケットもぎり、大会プログラムの販売を行なっていました。



無我夢中で駆け抜けた学連での日々

学連に実際に入ってみると、1年生の頃はほぼ雑用。 

会議に向けた資料をひたすらコピーする、大会前は企業に送るご案内と招待状の準備、運営、荷物の準備、片付け、事務所のゴミ捨て、電話番。 

想像しているものとはかなりかけ離れた業務ばかりでした。


右も左もわからず、最初はコピーの取り方すらわからず、電話の取り方を教わり、メールの打ち方、そしてなによりパソコンをほぼ初めて使うのでまずそこに慣れることに苦労しました。 1年目はただひたすら雑用をこなし、目の前の仕事を次から次へ覚えていくという怒涛の日々でした。 

しかし、これが2年生以降の業務、また社会人になった今でも役に立っています。


私は渉外部として大会プログラムの作成を主に行なっていましたが、同時に各大会ごとの協賛企業の獲得、つまり営業活動にも携わっていました。 

大会プログラムに掲載する広告、試合会場で掲載する広告、全て一から価格帯を決めてセールスシートを作成し、100社以上の企業に郵送し、実際に電話や訪問をしてお願いをする業務です。 気づけば、4年間の学連生活の中で300名近い方と名刺交換をしていました。 

普通の大学生では、まず経験できない企業の方とのやりとり、礼儀や常識を学連での4年間で習得できたと思います。


とはいえ、メディア露出も少ないバスケでの協賛企業の獲得はかなり厳しく、 “観るバスケ”を知らない人たちに向けてセールスするのは簡単なものではなく、学生運営を理由に相手にされないことも多々ありました。 実際にやり取りをしている中で、「礼儀がなっていない」「学生だからって許されると思うな」「学連はどうなっているんだ」と強く言われることもありました。 

ただ、そこで頭を下げてくださった同じ学生の先輩や理事の方々を見て、初めて「責任」を感じるようになりました。 私自身もプレイヤーとしてバスケットボールをやっていたのである程度の責任感と、周りのことも見て判断できる方だと自分を評価していましたが、全くそんなことはありませんでした。 学生だけではなく、多くの企業が関わっていること、自分の言動一つがどれだけの影響力があるのか学連に入って改めて実感しました。


学連生活を振り返ると正直文句や不満を言われる立場であることの方が多かったですが、そんな中でも平日にも関わらず毎回会場へ足を運んでくださる大学バスケファンの方々から受付にいつも座っている私の名前まで覚えてくれて「清野さん、いつもお疲れ様!」と声をかけていただくことはとても励みでした。

そして、大学バスケの熱い想いや、がむしゃらに優勝を狙う選手の汗水流して戦う姿を見て、是非一緒に盛り上げていきましょうと言ってくださった企業様も多くいました。 

自分たちが準備した会場にお客さんが集まる、一から作成した大会プログラムを購入してくれる方がいる、といった成果をはっきりと見ることができるこの仕事はとてもやりがいと達成感がありました。


多数の制約を持つ競技運営

大学バスケの運営で大きなハードルがあるとすれば学連自体が商業目的として動いている団体ではないということです。

すなわち、大きな予算もなく、決まったホームアリーナがあるわけでもないため、大会を開催する体育館を取るだけでも本当に骨が折れます。


近場で体育館が確保できることはほぼ稀で、現実的には遠隔地で予約の取れた体育館を使い、その使用料に伴って今度はチケットや販売プログラムの金額を決めるのですが、使用料によってはその金額を上げざるを得ないこともあります。


その事情を知らない大学の選手からすれば「なぜこんなに遠くで試合をしなければならないのか」と思っている人も少なくないと思います。

試合を観に来る観客の皆さんも同様に思っているでしょう。

何せ片道何時間もかけて会場まできて試合をして帰らなければいけないのが現状ですから・・・。


そして、苦労して会場が取れても今度は大きく広告費などをかけるわけにもいかず、それに伴う集客が出来ていない現実があります。

1日で6試合やってチケットは1500円。1試合 250 円で観られる計算です。

バスケ好きから考えると1日6試合12チームもの試合を1500円で観ることができるのは安すぎるしお得すぎると個人的には思っています。

バスケそのものの面白さもありますが、Bリーグで活躍する選手のほとんどが大学卒でプレイすることを考えると、未来のBリーガーが多く活躍しているこの大学バスケほど面白いものはないです。4年間対戦相手として戦ってきた相手がプロでは同じチームで戦う、大学では同期、先輩後輩関係だった選手たちがプロでは対戦相手として戦っている。

学生時代から長い目で見るとまたプロバスケットボールの見方も変わってくるように思います。


それでも大学バスケの1試合の平均観客動員数は、500人にも届きません。それをどう伝え、どう集客につなげるかは今後も大きな課題として残っています。 

 そして、試合開催を複雑にしている側面としてあげられるのは、例えば試合の実施を1つの大学にフォーカスを当て、ホーム&アウェーで考えれば簡単なのですが、所属する100校以上の大学を対象としているために企画1つ立てるとしても偏りが生まれないよう考えなければならないため出来ることが限られてきます。

また、アメリカの大学スポーツのように大学そのものがブランドとして成り立っていればそれを売りに出していくことが出来るのですが日本にはまだその考えは薄いです。


学連役員の学生はもっと大学バスケを多くの人に楽しんでもらいたい、観客動員を増やしてバスケの楽しさを知ってほしいという思いからそれぞれがやってみたいこと、実現したいことがたくさんありますがもちろん学生だけで出来ることは少なく、支援してくださる企業様、BリーグやWリーグのプロの力が必要な場面が多くあります。


実際に大会前には企画書を持って行って提案をし、助けを求めに相談させていただくこともあります。 限られた予算の中で経費をできるだけ削り、使いたいところに使えるように考える。 企画書を出しても「これだと人は集まらない」とはっきり言われたこともあります。


それでも学生を相手にここまで親身になって話を聞いてくださり、相談にのってくださる方々がいることは今の学連役員の学生たちにも知っていてほしいし、それが当たり前にならないでほしいです。 時間を割いて「一緒に大学バスケを盛り上げていきたいですね」と考え抜いてくれる大人がいることは私たちにとってはとても貴重です。


仕事をする中では当たり前のことですがこのような経験を社会人になる前にできたことは本当に自分にとって大きな経験だと感じています。 

限られた時間とお金の中でどれだけ大学バスケに対してできることを考えそれが実行できるか、責任が伴われる仕事ではありますが一人一人の動きが着実に大学バスケの未来を変えていると感じていました。


大学バスケを支える存在

学連生活の中で、一番思い出に残っているのは、4年次のリーグ戦最終日。横浜国際プールというBリーグの会場にもなるかなり大きな会場でした。 

設営も普段の大学体育館の倍以上はかかる会場で、いつもは前日に学連役員が設営をし、試合後に撤収作業をするのですが、 その日は当部の陸川監督からの声かけで当時の内田キャプテン(現・レバンガ北海道)から全大学チームに呼びかけがあり、試合後の撤収に選手・スタッフが40名近く集まってくれて、一緒に作業をすることができました。

つい何時間か前までそのコートで試合をしていた選手たちがゴールや観客席を片付けていた光景は忘れられません。


選手のほとんどは、裏方のスタッフがどのように動いているか、大会を運営しているか、知らない方も多いと思います。

当たり前のように会場に行って試合をする。その裏では会場手配や試合日調整、試合設営など、各大学のチームが勝つために試合する場を隔たりなく提供し運営することやその姿をより多くの人に知ってもらうために広報活動をしている人たちがいる。そして、同世代の学生も本気で向き合ってやっている。プレイをする選手やチームの皆さんにも、裏方のスタッフたちの想いを知ってもらえたら嬉しいですし、大学スポーツへの関わり方は選手だけではなくて、私のような関わり方も含めて色々な関わり方があることを伝えられたら幸いです。


これからは大学スポーツが変わっていく時代です。大学バスケも、バスケ界だけでなく大学スポーツ界を盛り上げていけるよう、リーグ戦最終日の光景のように学連・選手ともに手を取り合って、様々なチャレンジをして行ってもらえることを切に願っています。

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