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“主体的”なチームを作る|コーチングの導入方法

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2019年06月26日

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この記事でわかること

・部員全員に主体的な行動を促すためのノウハウの伝授
 「傾聴」と「質問」を利用したコーチングの方法

・普段の練習へのコーチングの落とし込み方

「なかなか後輩の技術が上がらない」

「チームプレーへの意識が低い」

「AチームとBチームのモチベーションに差がある」


みなさんは部内でこんな悩みを抱えたことはありませんか?

本日はコーチングという技術を通して、そんな悩みを解決するためのノウハウをお伝えします。


今回の記事では、コーチングについてより詳しく、そして部活ではどのように応用できるのか、についてお伝えします。


「ティーチングとコーチングの違い」についてまだ理解していない方は先にこちらの記事を読んでください。

📖:“主体的”なチームを作る|コーチングとティーチングの違いって?

コーチングとは

まず、コーチングとは

「コーチが相手の潜在意識に働きかけて主体的な行動を引き出すコミュニケーションスキル」

を意味します。

少しわかりづらいので「潜在意識に働きかける」と「主体的な行動を引き出す」の2つの要素に分けてお伝えします。

「潜在意識に働きかける」

まずは以下の質問について考えてみてください。

「あなたはなぜその部活に入りましたか」


「大学でも勝負の世界にいたいから」

「自主性を求められる体育会で自分を鍛えたい」

「先輩が魅力的で」

「新しいチャレンジがしてみたい」

など多くの答えが返ってきそうですね。


それでは次の質問はどうでしょう。



「部活を通してあなたはどんな人間になりたいですか」


この質問に対してすぐに返答ができる人はそれほど多くないのではないでしょうか。
それは「リーグ昇格」や「インカレ出場」など、結果についての目標はあっても、「その目標を達成することで得たいもの・なりたい自分」という結果の先の目標、つまり目的を意識することは少ないからだと考えています。


例えば、結果の先に目標を持つと以下のように意識が変わります。

テニスにおいて「フォアハンドがうまくなる」ではなく「フォアハンドがうまくなることで、〇〇なプレーがしたい」という一歩先の目標を持ち、具体的にプレーしている姿がイメージされることで、練習の質やモチベーションが変わります。


ただ、自分一人で目標の先を考える機会は多くありませんし、自分の中だけで考えていてもなかなか思考が深まることがありません。そこでコーチングでは質問を通して、普段あまり考えていないことについて思考を働かせ、本質的な課題に気づかせることができます。

「主体的な行動を引き出す」

「主体的な行動」という言葉はよく部活のミーティングなどでも耳にします。部員に対して「チームのために何ができるかを考えて主体的に取り組もう」という声掛けは多くの部活で行われているのではないでしょうか。


さて、「主体的な行動」に向けて必要なこととは何でしょうか。なんとなく普段使っている言葉ですが、どうすれば主体的な行動が起きるのかは考えません。
そこで、ここでは主体的な行動を起こすまでの過程を

①目標設定
②現状把握
③目標と現状の差の把握
④差を埋めるための行動把握

の4段階と設定します。コーチングではそれぞれの段階に対して質問を投げかけ、最終的には自分が何をすべきか自己判断できるようにします。ここで大事なのは「自己判断」という部分です。


「先輩やOBがこう言ったから」「セオリーとしてはこれが正しいから」「みんなこうやっているから」ではなく、「自分がどうなりたいか」という自分自身の中にある価値観で自分に合わせた行動を設定することで無理のないプランを立てることができます。これにより、やらされている感覚ではなく、自分が選択しているという当事者意識・主体性を持って活動に取り組むことができます。


それでは、どのようにすれば「コーチング」を行うことができるのでしょうか?

コーチングに必要なスキル

ここではコーチングに必要な「傾聴」と「質問」という2つのスキルを紹介します。

傾聴

同じ「きく」という言葉でも、「聞」という文字には「耳」だけが入っていますが、「聴」という文字には「耳」「目」「心」の文字が入っています。つまり傾聴とは相手の話に耳と目と心を傾けて聴く、という意味になります。

この傾聴はコーチングを行う上で基礎の基礎であるがゆえに最も必要なスキルといっても過言ではありません。


相手の発言に対してどれだけ意見を挟みたくなってもぐっとこらえて、時間の許す限り話が終わることを待ちましょうまた相手が返答を考えているときも同じです。その時間は相手が自分自身と向き合っている大事な時間です。沈黙を守り相手がストレスなく考えることのできる空間を作りましょう。


ここで大切なことは相手を信じ抜くことです。「必ずこの人は自分なりの答えを出してくれる」と信じ、傾聴を貫き通しましょう。


「コーチングを/する側:される側=2:8」

くらいの割合で話すイメージを持って会話をしてみてください。

質問

コーチングでは傾聴にとどまらず、こちらからの発言も行います。

テーマへの返答に対して、

「そもそもなんで~を始めたの?」

「ほかにはどんな意見・アイデアがある?」

「~をもっと詳しく聞かせて」

などの質問を行い、普段は考えることのない部分を考えさせることで違った視点に導きます。この際には、質問者が本当に興味関心を持った部分を質問することが望ましいです。そのため質問者は自分が興味を持って聞けそうな部分を探しながら話を聴けるとより良いです。

部活動への導入方法

ここまでコーチングそのものや使用するスキルについて話してきましたが、ここからは実際に部活でどのように導入していくのかを2つの例を通じてご紹介します。

ケース1:ミーティングに活用

1つ目はミーティングの際にコーチングを使った例です。
ミーティング後に、チームとしての目標や現状を整理し、それに向けた具体的な行動を起こせるようにすることを目標として行いました。
このチームの目標は、「強いチームを作る」というものでした。

「強い」と言っても、強さには競技力以外にも社会貢献や人間力の高さ、チームへの貢献など多くの意味合いが含まれています。
目標の再共有が終わると、ペアを作り、先程紹介したような質問スキルを用いながらお互いにコーチングを行い、それぞれのペアで出た考えを全体に共有します。


この時のテーマは
「目標に対する今の部活の課題は何か」
「その課題に向けて自分にしかできないことは何か」

「自分にしかできないことに向けて今日からできることは何か」
というものでした。


それぞれのテーマに対して相手が答えたものにどんどん掘り下げる質問を行ったり、「そもそもなんでそれは課題なんだっけ?」という根本的な質問を行い、相手の視点を色々なところに連れていきます。
そうすることで今までは気づかなかった、忘れていた部活や自分の課題、可能性に気づき、最後のテーマでそれを向けた自分の行動までを自分で決定することができるのです。


実際にこのミーティング後に、「下級生が仕事面でのミーティングを自分たちで行い仕事効率が上がった」「地域の子供との交流会を企画した」などの変化がありました。
ただミーティングを行っても、なかなか本心からの意見は出てきません。それが下級生であればなおさらでしょう。


しかし、相手の意見を受け止め、そこから目標に向かって議論していける環境があれば、少しずつであっても本音が出てきます。時間がとてもかかるものではありますが、より多くの部員が納得感を持ったチーム作りのために焦らずじっくりと議論することが必要です。

ケース2:声かけに活用

2つ目は声かけに活用するというものです。
ある部活では、普段の声かけが、

「なんでそのミスをしたんだ」

「簡単なミス多いよ」

「しっかり声出して」

といったものが多くありました。


もちろん、時間のない中で短い言葉で相手に伝えなくてはいけない場面もあります。しかし、このような声かけをされた側に主体的な行動は生まれていませんでした。

素直に「なぜそのミスをしたのか」 「簡単なミスの原因は」と考える部員は少ないですし、声出しについては何も考えずに声を張り上げているだけです。


言われている側の意識が低い、と片付けることはできるかもしれません。しかし、目標目的がないままの行動にモチベーションを保ち続けるのは非常に難しいことなのです。
ここでコーチングの要素を取り入れ、「今のプレーを選んだ理由は?」「良かったところと悪かったところをあげてみて」といった、相手に答えを求める双方向のコミュニケーションを持つようにしました。


主に上級生がこのような声かけを行うようにして、少し時間は取られますが、プレーの合間や休憩時間にもこのような質問も行なっていきます。
それにより、最初は質問ばかりされていた部員が、だんだんと自分で自分に対して質問できるようになり、同じパターンのミスが減ったばかりか、他の部員が思いつかなかったようなプレーまでできるようになりました。


このように、頭ごなしに指摘するのではなく、自分で考えさせることで、全てのプレーに対して当事者意識を持ち、自律した行動が生まれていきます。


「もっと考えろ」という声かけで相手は考えません。面倒と思うこともあるかもしれませんが、チームメイトを信じて、対話を続けてみてください。相手の意識、行動が変わった時には、試合で勝った時とはまた違った達成感が得られるかと思います。

まとめ

・コーチングとはコーチが相手の潜在意識に働きかけて主体的な行動を引き出すコミュニケーションスキル
・傾聴や質問のスキルを用いて相手の普段の視点を変えることが大事
・根拠なくとも相手のことを信じぬくことが必要。
・ミーティングや普段の声掛けに応用することができる
・コーチングを行う際には心理的な安全性が保たれる場の設計を行う

これらはコーチングの基礎の中でも一部にすぎませんが、コーチングは何よりも実践していくことが大事です。自分たちのチームにとってはどのようなコーチングの導入の仕方が合っているのかを模索しながらたくさん実践を繰り返してみてください。

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