• TOP
  • 組織力強化
  • 2年でリーグ3部から1部へ。快進撃の裏側|神奈川大学バスケットボール部

2年でリーグ3部から1部へ。快進撃の裏側|神奈川大学バスケットボール部

TOPICS
2019年10月07日

SHARE

はじめに

みなさんは、数年前に神奈川大学バスケットボール部が快挙を成し遂げたことをご存知だろうか?

2015年に関東3部リーグに降格したチームが、翌年の2016年に「関東2部リーグ昇格」「関東総合バスケットボール選手権大会優勝」を果たし、その後のオールジャパンでチーム史上初めて白星をあげた。

 

そして、2017年創部史上初の関東一部昇格とインカレ7位の実績を残し、わずか3年間で天国と地獄を見たチームである。

 

この快挙の裏にある軌跡を当時の主務であった廣瀬さんからのインタビューを中心に、当時のキャプテンや現監督の幸嶋さんからの視点で振り返っていく。

なぜチームは地獄を見て、復活し、史上初をいくつも達成できたのだろうか。

神奈川大学バスケットボール部での快挙の軌跡

ここからは実際に神大バスケ部の軌跡を当時バスケ部に主務として所属していた廣瀬さんのインタビューをベースに2015年〜現在までを伝える。

このままではいけない危機感(2015年代替わり)

廣瀬さんの入部当初、チームは良くも悪くも「普通の良いチーム」であった。


各県で高校時代に上位の成績を残した選手が集い、広い体育館が使え、監督がいて、実力は平均よりは上だが、さらに上にいるチームには追いつけそうにない。関東2部リーグで戦い続けることができるが、より高みには届きそうで届かない。そんなチームでいた。

 

そういった状況下で廣瀬さんの1つ上の代のキャプテンが放った一言。

 

「このままじゃダメだよね?」

 

ありきたりな言葉かもしれないが、この一言からとてもありきたりとは言えないチーム変革がはじまった

当時のキャプテン(通称:ロボ)

この時に変わったことは、主に2つ。

「上手かったら何しても良い」を辞めた

キャプテンはどんなに技術が高くても、わがままに振る舞う選手をBチームへ降格させた。

その選手が例え、バスケットボールが上手かったとしても、チームの雰囲気を乱す者に対しては決して妥協を許さなかった。

コート外での活動の実施

学内での清掃活動をはじめ、応援されるチームであるために学校や学生に還元できる限りの事をした。

2015年:変革と痛み

危機感とともに変革をするチームには、大きな痛みをもたらした。

結論から言うと、チームは関東3部リーグへ降格した。

理由は明確で、チーム全体のことを考えられない選手をBチームへ落とした結果、Aチームにいるのは「真面目で良い人」であった。

そこに技術が伴っているのかは、別問題。

 

キャプテンが行なった変革の1年は成績の観点から見れば、完全に「失敗」に終わった。

それでも、一度始めたことを途中で投げ出すことは決してしなかった。

結果は出なくても、チームはこのままではいけない危機感を元にシーズンをやり抜いた。

 

この1年でヘッドコーチや大人のスタッフと選手間のコミュニケーション量はキャプテンの尽力により、今までにないほど多くなっていた。

 

それにより、大人も含めて一緒にチームを作っていくための手応えを感じ、意志を受け継いだ廣瀬さんの代がこの失敗をそのままで終わらせなかった。

この年、リーグ戦2勝であったがチーム全員で戦う雰囲気が出来てきた

2016年:変革を一過性にしない目標

代替わりを経て、廣瀬さんの代になった。

チームとして、1年の方針を決めるときに、昨年度を振り返った。

 

「昨年のキャプテンが作り上げてきた組織文化は決して間違ってない。続けよう!」

 

大きな要因は先代のキャプテンの人望と姿勢だった。

キャプテンは1日も妥協せず、やり抜き、仲間に対する意見も厭うことはなかった。

簡単なように聞こえて、チームスポーツを経験するものからして、簡単なものではないことは明白だ。それを一番近くで見ていた後輩である廣瀬さんの代が共通認識を持ち、チームが走り出した。

 

ここでチームは2つの目標を掲げた。

⑴誰からも応援されるチーム

◯誰からでも応援されるチームになろう。神大の看板を背負って戦おう。

◯誰よりも自分たちのチームという、「当事者意識」を高く持ち部活動に励もう。

◯スタッフや監督とコミュニケーションを取り、相互理解を深めよう。

⑵歴代最強で最高の神奈川大学

競技としても結果を出して、正しさを証明しよう。そして、最高の仲間と共に成し遂げよう。

◯練習面での変化

・これまではAチームとBチームは別で練習していたものを統一した。

・練習も3部練習に増やした。

◯組織面での変化

・MTGの増加

→スタッフや監督とも会話、対話する機会を増やした

・先代のキャプテン同様、上手くても練習の雰囲気を乱す選手には厳しくした

・上級生が誰よりも真剣に熱意を持って取り組んだ

 

この目標を定めた根底には、全員の中にこれからの神大を作る意識があった。

これからの神大を作るのであれば、自分たちが自分たちに対して、誰よりも一番厳しく、最後までやり抜けなければならないという意識がチームに根付いていた。そして、今いる後輩を来年は必ず2部リーグでプレーさせる共通認識を持っていた。

2016年:結果を出さなければいけない状況

目標を定め、チームは間違いなく良い方向に進んでいた。

ここでチームとして、新しい目標を設定した。

 

オールジャパン※1(天皇杯)出場」

※1毎年1月に行われるバスケットボール日本一を決める大会。プロクラブ・実業団・クラブチーム・大学・高校のトップチームが出場する。

 

これがどれほど無謀であるかはチーム全員が最も理解していた。

それまでの実績は関東予選は疎か、県予選すらも1度も突破したことがなかった。だが、この目標設定はこれからの神大を作るには絶対に欠かせない目標であった。

 

理由は2つである。

1つは、部活動として今の体制を維持するため。

3部リーグに降格した神奈川大学は全国大会を狙える位置にいなければ、強化部を外される可能性があった。チームは正に、背水の陣であった。

もう1つは、次の神大を作るためのきっかけ作り。

この目標を達成できなければ、これからを作るという意識は意識だけで終わってしまう。後輩のためにも絶対に結果で示したかった。

 

リーグ戦では4年生よりも3年生の方が試合に絡むことが多かった。

ただ、このチームの組織文化は試合に出ているか否かは関係なく言い合える/聞き合える組織文化が形成されていた。チームは立場、学年関係なく言い合えることでより強さを増していった。このときにあったのはやはり、危機感とこれからを作る意識だった。

2016年:破竹の快進撃

このシーズンのチームは創部初を連発した。まさに快挙であった。

創部初・ALLJAPAN県予選優勝

関東総合選手権への切符を手に入れた。

創部初・ALLJAPAN関東予選で優勝

これにより、ALLJAPAN2017への出場が決定した。

創部初・ALLJAPANで勝利

プレータイムが少なくても全力で後輩を応援する4年生

1年で2部リーグ復帰

関東3部リーグで優勝し、入れ替え戦を制し、1年での2部リーグへの復帰を決めた。

涙を流し喜ぶキャプテンの江上さん

信じられない快進撃だった。

当時のチームの現状を大学の公式HPでのコメントでチームの現状を的確に示しているコメントがある。

関東2部リーグ復帰&県予選優勝時

昨年の入れ替え戦から一年。

皆さまのご声援のおかげで、入れ替え戦に勝利し、チームの目標のひとつである「2部昇格」を達成いたしました。


この一年間、さまざまなことがあり、何度も悔しい思いをしました。今シーズンは下級生のプレータイムが多いシーズンでした。そんな中4年生は、「来シーズン後輩たちに、2部のステージで試合をさせたい。インカレに行ってもらいたい。」と、試合中はもちろん練習中から誰よりもハードに、手を抜くことなく、その背中でチームを引っ張ってくれました。

それに続いて後輩たちは、「4年生のために、最後は笑ってもらいたい。少しでも長く一緒にバスケットがしたい。」と積極的に声を出し、コートやベンチで最後まで全力で戦い、どんなことも、チーム全員で乗り越えてきました。


リーグ戦の開幕戦から18試合。多くの経験をし、皆さまの応援のおかげで、僕たちは最後まで成長し続けることができました。

また、僕たちの日頃の活動は、学生の為に時間を削り、チームの為に大切なことを伝え続けてくれた 幸嶋HCをはじめ、スタッフの皆さんの尽力のおかげだと感じています。リーグ戦や入れ替え戦では、保護者の皆さんを始めOBの方々や一般の大学バスケファンの方など、「神奈川大学を見たい」という多くの方が遠いところから足を運んでくださり、応援に来てくださいました。


シュートが決まった時の歓声。下を向きそうな時にきこえる暖かく熱い声援。それらがいつも背中を押してくれています。その度に応援してくださっている方がいてくださることを、より強く感じます。そのような方々に支えられ、私たちはこのような結果を残すことができました。応援してくださる方々、OBの方々、大人のスタッフそして選手達、すべての力が合わさり最高のチームになりました!


感謝の気持ちを忘れずに、コートでのプレー、姿勢で応えること。それが私たちにできる最大の恩返しだと思っています。

目標である「誰からも応援されるチーム」にもっともっと近づいていくために。皆さま、本当にありがとうございました。
【引用】神奈川大学公式HP:
【男子バスケットボール部】関東大学バスケットボールリーグ2部昇格が決定!

関東予選優勝時

「第92回天皇杯 全日本総合バスケットボール選手権大会(オールジャパン2017)」は、来年1月2日(月・祝)より開催されます。
トーナメント形式の大会となり、私たちの初戦は 2017年1月3日(火) 14:00~、 対SWOOPS(東海地区1位)、代々木第一体育館での試合となります。ここで勝利することができれば2回戦は東海大学(インカレ2位)。全国でもトップレベルの強豪大学と戦うことができます。平均身長178cm、私たち神奈川大学のチーム力が全国の舞台で試される時が来ました。

ただ、出場できることに満足するのではなく、リーグ1部昇格を目指して戦っていく来シーズンに繋げられるように。4年生は最後、後輩たちに良いものを残せるように今まで以上に熱く!ハードに!気を引き締め直し、もう一度目の前にあることから、練習を頑張ります。
チームではミーティングをし、ALLJAPANに向けて目標の再設定をしています。やるからには、ひとつでも多く勝つために。「神奈川大学は、こんなチームだぞ」と胸を張って全国のコートで、私たちの姿勢で伝えられるように。

最後の集大成となるこの大会で、今シーズン一番成長した、最高の神奈川大学の姿を皆さまにお見せできることを目指し、全日本総合でも関東代表として学生らしく、胸を張り、精一杯戦ってきます。
皆さま、応援よろしくお願いいたします!
【引用】神奈川大学公式HP:
【男子バスケットボール部】平成28年度関東総合バスケットボール選手権大会優勝!

チームは意識と共に結果で苦しく痛みを伴った変革の成功を示した。

誰からでも応援されるようになったチームが名実ともに歴代で最高で最強な神奈川大学になった。

ALLJAPANでは1回戦で東海地区の代表と試合をし、ALLJAPAN創部初の初勝利を納めている。なお、次の2回戦で東海大学と対戦し、敗退した。

2017年〜:受け継がれるマインドと大成

先輩の強い意志のもと2部リーグの舞台でプレーすることができたこの代は新しい神奈川大学を証明するにふさわしい成績を収めた。

やることは変えない、より強く

この代に関しても、共闘した1つ上の代の方針を踏襲した。

新しくキャプテンになった阿達さん

先輩たちが成し遂げたことは結果も伴いながら、確信に変わっていった。それでも、当時のキャプテンの阿達は、1つ上の先輩と自分たちを比べると足りない部分を感じていた。


阿達さんは、当時をこう振り返る。

「先輩達が築き上げた伝統(泥臭いプレー、諦めない気持ち)を私達の代でも継続して創部初の一部昇格を目標に取り組もうと思っていました。」

 

3部リーグからオールジャパンに出る快挙を成し遂げたチームは浮かれることなく、着実に先輩たちのマインドを継承してより強固にしていった。

以後、現在に至るまで「誰からも応援されるチーム」「歴代最強で最高の神奈川大学」と掲げたビジョンは引き継がれている。

正しさの価値は結果が証明してくれた

元々、昨年も試合に出ていた選手が多く、自分たちの代になったときには、絶妙なコンビネーションと粘りのディフェンスを武器に2部リーグ復帰したてながら、勝利を積み重ねていった。苦しみを経て、創部70年目にして初の関東1部リーグ昇格とインカレ7位という結果を残した。

明確な特徴がチームのスタイルに

競技面では平均身長が低いながらも、粘り強いディフェンスとハードワークが神大のスタイルとして定着した。

組織面では「誰からも応援されるチーム」「歴代最強で最高の神奈川大学」をベースに誰よりも責任を持ち練習する4年生の背中を見て後輩が育つ環境が出来上がった。

 

『後輩は先輩の背中を見て育つ』

 

組織の定石を利用して、痛みを伴いながらも変革を起こした結果がチームを作った。

まさに1人ひとりがこれからの神大を作る意識が産んだ賜物であった。

当時を振り返って

主務・廣瀬雄勁

当時を思い返すと、苦しいこともありましたが、神大バスケ部の未来を想像すると、楽しく頑張れました。

僕が入部した時から、チームにはハードワークが根付き、アットホームな雰囲気がありました。


もう1ステップ上のステージに行くための組織改革がこの時行えたのは、沢山の先輩方が神奈川大学男子バスケットボール部の歴史と土台を作って下さったおかげだと思います。


保護者・OB・大学関係者など、支えて下った沢山の方へ感謝しています。

ロボさん(左)と廣瀬さん(右)

監督・幸嶋謙二

写真中央:幸嶋監督

ロボの代からの組織変化について

我々の組織は、奨学金制度がないので飛び抜けた選手がいない為、チーム力で戦わなくてはならなかった。

だが目先の成績(2部リーグ残留)にとらわれて、チーム内で上手い選手のわがままを許してしまっていたチームの健康状態は良くなかった。

スポーツ推薦がなかった頃に築いた、上手い下手よりも「頑張ること」「私生活の見直し」を最優先してチームの再建を図った。


その結果、3部リーグに降格してしまったが、チームの健康状態は良くなった。

そして、落ち込んでいた私を助けてくれたのは、選手たちであった。


そうなると、当然自主性が高まりやらされている練習はなくなり、接戦をものにできるチームへと変わっていき、現在のチームの原型となっている。


3部に降格させてしまった当時の4年生には辛い思いをさせてしまったが、間違いなく現在のチームがあるのはフロンティアである当時の4年生のおかげである。

また、私の運が良いのは、この時の4年生と次代の4年生に出会えたことであり、新興チームながら伝統を作れたと思っている。

組織改革を行ないたい人へ

各大学によって雇用の問題もあるので、とても難しい問題ですね。。。


今は、情報が氾濫してスキルや戦術に逃げ道を持っていく選手が多くなった気がします。

バスケットボールという競技はチームスポーツなので主役は選手でも、組織が成功するためには「情熱」「勤勉」「忠誠心」を持ったリーダーが必要だと思います。
「情熱」「勤勉」「忠誠心」は必ず選手に伝わります!


私は前述したように運が良かったのですが、アクションを起こすならば、目標設定を明確にしてその目標に向かっていける組織作りを目指すのが良いと思います。


まず本気で目標を達成しようとする5人を作り、そこから8人〜10人〜15人へと波及させる作業をしたこともありました。


まずは、アクションを起こしてみてはどうでしょうか?


つまずいたら、他大学の先輩指導者方、(例えば東海大学の陸川コーチや筑波大学の吉田コーチなど)に聞けば良いんじゃないかな。
皆、頑張っている者には何でも協力してくれますよ。

勿論、私にできることがあれば何でも協力します。バスケットボールに限らず。


長文失礼しました。


神奈川大学バスケットボール部 監督 幸嶋謙二

最後に

現在でも1部で戦い続けている神大ですが、今のチームには大学日本代表に選出される選手がいるほど、あらゆる方面から注目されるチームになっています。

しかし、2015年当初やその年のシーズンの終わりに現在の素晴らしい組織文化や神大スタイル、競技成績は到底想像することはできなかったでしょう。

それでも、変革の痛みを伴いながら自分たちの成すことを信じ、やりぬいた結果が現在です。

 

部活動では、「俺たち・私たちの代」という言葉がよく聞かれます。

確かに大学スポーツでは競技生活に時間的なリミットがあります。

加えて、卒業を控え、集大成を迎える大会ではまず目先の一勝に目がいくと思います。これは決して悪いことではないと思いますが、もっと多様な視点を養い、視座を高くすることによって異なる景色が見えることもあるのではないでしょうか?

 

何より、目先の一勝と中長期的なチームとしての勝利は最終的には絶対に交わるはずです。

だからこそ、目先の一勝を無駄にしない、俺たちのチーム作り、私たちの大学の部活動としてのチーム作り、競技を愛するものとして長い目線での組織文化を作っていくことが重要であると考えています。

そして、どこにも正解がないからこそ、マインドを生み出し、継承しながら、変わり続けていくことが大切ではないでしょうか。

2部リーグ昇格の瞬間

おまけ|載せきれなかった良い写真

こちらのエリアは会員専用(※無料)です。

SHARE

RELATED EVENT関連イベント

DOWNLOAD資料ダウンロード