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“日本一安全なラクロス部”を目指して|日本体育大学ラクロス部

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2020年01月22日

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日本体育大学ラクロス部

部員約200名をかかえる、日本体育大学ラクロス部。(Twitter:男子部女子部

現在男子は、関東学生ラクロスリーグ戦1部リーグAブロック、女子は、関東学生ラクロスリーグ戦1部リーグBブロックでプレーしている。

今回、話を伺ったのは、部長の亀山有希先生(児童スポーツ教育学部 児童スポーツ教育学科 准教授)。

 

日本体育大学ラクロス部は、競技での日本一を目指しているのだが、競技だけでなく『安全面でも日本一のラクロス部』を目指している。

 

以下は、日本一安全な部活を目指して日本体育大学ラクロス部が取り組んでいることについて紹介していきたい。

日本一安全な部活を目指す

ラクロス部・部長 亀山先生

きっかけは、年に数回救急車を呼ばないといけない状況があったことです。

ラクロスに特化した傷害や事故に関して知識がないことに危機感を感じたということが全ての始まりです。

 

事故が発生する時は、いくつかの段階があります。

専属のコーチ・スタッフはもちろん、上級生はある程度どの段階の状況にも対応できることを知っていましたが、ラクロス部の人数が増えてきた昨年頃から、特に下級生の練習を中心に“ひやっとする”場面が増えてきました。


ここでなぜ、日本体育大学ラクロス部が日本一安全な部活を目指すのか?という話をさせていただくと、それは、“日本体育大学”という大学自体の目的に遡ります。


ラクロス部とはいえ、部員は日本体育大学の学生であり、どの学部に所属していても体育・スポーツの専攻生

体育・スポーツのプロとして、まず自分たちの命は自分で守り、仲間の命も守り、日本体育大学の学生だからこそ同じフィールドで戦う他大学の仲間の命も守れるという人材を育てたいという思いから来ています。


『安全面でも日本一のラクロス部』を作っていくに当たって2段階で新しい取り組みを行ないました。

『命を守る個人調書』の作成・デジタル化

個人調書のフォーマットを作成し、既往歴・食べ物アレルギー等の疾病関係の情報や、個人情報と呼ばれる所属学部・顔写真・保護者の連絡先などのいざという時に必要な情報を全てデジタル化し、研究室のパソコン・iPad・スマートフォンからいつでもどこでもアクセスできるような体制を作りました。

 

保護者の方との連携も強化し、私と現場・家族がいつでも連絡を取れるようにしています。

日本体育大学ならではの強み

上記のような状態を作り上げた後も、一番大切な命を守る取り組みについて部長・日体大コーチングエクセレンスセンター・コーチ・部員との話し合いは続きました。


考えたことは、日本体育大学だからこそできることが何なのか?


日本体育大学は、5学部体制(体育学部・スポーツ文化学部・スポーツマネジメント学部・児童スポーツ教育学部・保健医療学部)に分かれ、その中にある保健医療学部という資源を活用しない手はない!という結論に至りました。


学内の資産を最大限に活用するということです。


これが、ラクロス部と保健医療学部・救急医療学科との共同参画のはじまりでした。

ラクロス部・救命救急セミナー

日本体育大学世田谷キャンパスで救急医療学部主導の、ラクロスの競技中に起こりやすい傷害や事故を想定した救命救急セミナーが開催され、その様子を取材した。

講師は、救急医療学科の鈴木健介先生

現役の救急救命士でもある鈴木先生は、バイタリティもあって現場のことを熟知している。


ラクロスに特化したセミナーにしようと提案したのも、鈴木先生であった。


セミナーは、1人の学生が突然倒れこむ場面からはじまる。

場内はざわつき、周りにいた学生は誰も対応することができずにいた。


『え、まじ?』

『大丈夫?』

 

部活中、このような状況に遭遇した場合、対応できる人は一体どれくらいいるのだろうか。。。

(取材班も突然の出来事に驚き、このシーンの写真を撮り忘れてしまった…)

 

『はい、OKでーす!』

鈴木先生の声とともに倒れこんだ学生は笑顔で立ち上がり、場内は安堵に包まれた。

 

それと同時に、プレーヤーたちの目つきも変わっていき、

『演技だったからよかったものの、本当に倒れていた時、自分は何ができるのか・・・?』

ということをその場にいた全員が考えられていたように思う。

ラクロス部の学生と救急医療学科の学生

「“楽しく学ぶ”をモットーに行なわれる鈴木先生の救急救命セミナーは扱う内容が重く、重要な内容ではあるものの、部員が笑顔で取り組んでおり、最初とのメリハリの作り方もさすが、日体生の特性をよく理解しているなという感じでした。」

亀山先生は、こうセミナーを振り返る。

 

同年代の救急救命士を目指す学生があいだに入りながら、呼吸の確認方法・観察方法、脈拍の取り方、心肺蘇生法等、基本的なことについて学べたことも、お互いに良かったのではないだろうか。

呼吸の確認をする学生

場所をグラウンドに変えて、ここからはラクロスを想定した本格的な実践。

練習・試合中の接触による頭部外傷・肉離れ・熱中症いくつかのパターンを想定して、救急医療学科の先生方や学生のみなさんが実践的にレクチャーしていた。

男子の場合ラクロスは、ヘルメットを着用してプレー

頭部外傷が起きた時、ヘルメットは外しても良いのか?

体勢が悪い時、どのように動かして良いのか?

 

救急医療学科の教員・学生からレクチャーを受けた後、少人数のグループに分かれて実際にやってみる。

想定された事象のパターン別にそれを繰り返し行なっていた。

うつ伏せで倒れてしまった人をどのように助ければ良いのか

熱中症の疑いがある人は、どのように日陰に運ぶのが最適か

実際のグラウンドで行なうことで、避難させる場所の想定、AEDまでの実際の距離、外で事故が起こった時に何が不足しそうなのか、何を用意しておく必要があるのかを確認しながら行なっていた。

最後に円陣を組み、セミナーは終了。

参加した保健医療学部の学生より

今回のセミナーに参加した救急医療学科の学生は、15名(1年:11人、2年:2名、3年:1名、4年:1名)。

将来は、救急救命士や救命センターで働くことを目指している。

ー実際に参加してみてどうでしたか?

普段の教室では、万が一の状況を想定して学んでいますが、いまいちリアリティ感がないと言うのが正直な感想です。

しかし、一歩グラウンドに出て、実際にラクロスの練習をしながら、実践に近い状況で対応することに大きな学びがあり、今まで学んできたことをベースにもう1ステップあがった状態で学ぶことができました。


実際に学内の部活とこのような取り組みに参加できるのは、日体ならではだと感じています。


“日本一の救命士”を目指すためにも、学内の他部活や、可能であれば学外のスポーツ団体とも積極的にこういった活動を行なっていければと思っています。


少し違う視点ですが、学内の部活を知る機会にもなって応援したい気持ちにもなりました。

最後に

常に危険と隣り合わせの状況にある、スポーツ。

今回ご紹介した日本体育大学は体育・スポーツの専門大学であり、言うならば“整った環境”で部活動に取り組めている、と言うのが筆者の正直な感想です。


大学スポーツだけではないかもしれませんが、大学スポーツには指導者がいない部活がとても多い一方で、安心安全のための知識や命を守る方法を得る場が少ないように感じます。


命を守るための体制はどの部活動にも必要なのではないでしょうか。


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