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9年ぶりの日本インカレ優勝へ~主将の取り組み~|順天堂大学陸上競技部

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2020年03月10日

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9年ぶりの日本インカレ総合優勝

順天堂大学陸上競技部には、学生陸上において最高レベルの大会である日本学生陸上競技対校選手権大会(以下、日本インカレ)で歴代最多の総合優勝27回といった歴史がある。

多数のオリンピック選手や日本代表選手の輩出もされている名門大学だ。


そんな順天堂大学陸上競技部で陸上に励みたいと志高く、毎年70人前後の新入生が入部し、300人近い部員が所属している。

自分もそんな思いで、4年前に順天堂大学陸上競技部に入部した。

 

入部1年目、2016年の日本インカレは総合2位という結果であった。

翌年、2017年の日本インカレも総合2位

2018年の日本インカレも大会後半の快進撃を見せるも、またもや総合2位


勝てそうで勝てない、そんな状況が続いていた。


気づけば2012年からこれまで、日本大学に総合優勝7連覇を許していた。

悔しさはあったが、半ば諦めのような気持ちもあり、「万年2位だな」そんな言葉が部員の間でも交わされていた


当時3年生であった自分は、「チームで勝ちたい」と本気で思うようになっていた。

どうしたら勝てるのか、なぜ勝てないのか、いいチームはどうやったら創れるのか、いつの間にか誰よりもそんな事を考えるようになっていた。

9年ぶりの制覇に向けて、主将への立候補

チームとして何か大きな目標に向かって一つになれるということは、素晴らしいことだと思う。

目指すものが明確にあるということは、チームを創り上げる上でとても重要である。


それがまさに「日本インカレ総合優勝」であると思った。


「日本インカレ総合優勝」はチームを一つにするための合言葉のように使われてきたが、チーム一丸となる為の「手段」ではなく、あくまでチームで目指す「目標」である

一つになる為には、手段を講じなければならなかった。


たくさんの偉大な先輩方の背中を見ながら、順天堂大学陸上競技部に所属してからしか味わえない思いもしてきた。

その中で同期の仲間たちと部の問題点や、互いの理想をたくさん語り合った。


しかし、言葉だけでは目指す未来像には近づくことは決してできない。

行動することが、望む未来へと向かう方法であると思った。


来年は、自分たちの代が最高学年となる。

自分たちが、そして自分がやるしかないと思い主将に立候補した

制覇に向けての壁

主将として自分に何ができるかと考えたときに、自分なりの「主将としてあるべき姿」が何となく浮かんだ。

みんなのずっと先を歩くリーダーじゃなくていい、みんなと一緒に歩んでいけるリーダーになろう


強烈なリーダーシップで引っ張っていくタイプではないことは自分でもわかっていた。

みんなに助けてもらいながらでいい、みんなの良さが出せればきっとチームはいい方向に向かうと信じていた。

だがどうしても日本一になれない何かがある。

それを変えて、過去を超えたかった。

その何かを変えるためにいくつかの課題に取り組んだ。

課題への取り組み

個人の自覚を生む

陸上部では毎年、「日本インカレ総合優勝」をチーム目標にしている。

もちろん総合優勝したい気持ちは部員みんなが持っているだろうけど、当たり前のように総合優勝を目標に掲げてきて「本気で目指せていたのかな?」と改めて考えた


「チームの総合優勝のため」とは言っても、不鮮明であやふやすぎる気がしていた。

「チーム」が先行し過ぎて、部員「一人ひとり」の自覚がなくなっているのではないか。


個人種目である陸上の競技特性からしても、部員一人ひとりが自分の競技に集中してこそ、本来の力が発揮されて、結果的にチームのためになるのではないだろうか。


そう考え、集会の度に全部員の前で、「チームや監督、コーチのために走ろうと考えなくていい、自分のために走って、自分を1番に考えて競技に取り組んでほしい。」と伝えた。


これは決して、周りの事はほっといていいという意味ではない

自分の競技や日頃の生活、さらには普段の振る舞いに責任を持ってほしいという意味である

競技に真摯に取り組む選手が結果を出せば、本人にとってもチームメイトにとっても嬉しいものであり、きっとその気持ちの共有がチームの繋がりになる。


競技に真摯に取り組む姿勢が、競技力を向上させることはもちろん、周りの人にもきっといい影響を及ぼして、好循環を生むと考えた。

全員の熱量を高める


主将だけ本気になって熱くなっていても、絶対に目標の実現は不可能だと思っていた。

できるだけチーム内の熱量の差をなくしていきたいと考えていたが、具体的な案が浮かばなかった。


そんな時、女子主将から「チームのトップ陣でミーティングをしない?」という提案があった。

ここでミーティングに参加したのは、それぞれ男女の主将、副主将、4年生マネージャー、各ブロック(短距離や長距離、跳躍など種目ごとのブロック)の主任である。


最高学年の4年生が主体となっているチームのトップ陣は、責任感があり信頼のおける存在だった。

そこで、「各ブロックのことは主任に任せるのが1番だ!」と感じた。

日頃から、各ブロックの部員をまとめ、一緒に練習をして多くの時間を共有しているのが主任である。

そんな主任に、このミーティングで共有したものを各ブロックに持ち帰り部員に伝えてもらう。主将ではなく、もっと身近な存在である主任だからこそ伝えられることがあり、立場や考えの違いによって生まれてしまう熱量の差を少しでも無くすことができるのでないかと考えた


ミーティングの内容は、各ブロックの練習状況や役職の仕事がどのようになっているか、部で現在起こっている問題まで多岐にわたり、みんなで情報を持ち寄りとても良い雰囲気で行えていた。

ミーティングが終わると「なんかみんなと話したら頑張ろうって思えてきた」と主任と話したのを覚えている。


結果として、横の繋がりと縦の繋がりをより強いものにするためのとても重要なミーティングとなった。


同じ思いでミーティングに参加してくれたトップ陣には、『この状況でチームを変えようとすると、「勝てない」に着目することが多くて、ネガティブなイメージになりやすいけど、「負けないため」ではなく、このチームはこれから「勝ちにいく」チームなんだからポジティブにいこう、俺たちで変えよう。と伝えた。

部員の声を聞く

部に対する不満や要望は必ず上がる声であり、どんなに素晴らしい成果を残すチームでも、決して避けることのできない問題だろう。


普段から選手たちは、よく考えて競技と向き合っている。

練習内容、部員との関係性、部の問題点など、よく考えているからこそ、様々な声が選手たちから上がっていると考えた。


しかし、その声のほとんどは人伝いや噂などでしか聞くことができていなかった

そんな状況で自分の耳に入ってくる声は「文句」のように感じてしまった。

陰で言うような責任感のない発言は、「意見」ではなく「文句」と捉えられ、発言の意味すらなくなってしまう。

とは言え、部員から上がった声を、無視することはできないし、出来るだけ応えたいと思った。


そこで、関東インカレ(日本インカレに次ぐ規模の学生陸上の関東大会)後に全部員参加の部員反省会を行うことにした。

これまでは、大きな大会後に主将や主任、監督、コーチのみが参加する反省会は行っていたが、部員のみで行う反省会は行っていなかった。


部員反省会の目的は大きく2つあった。

1つは文字通り反省をして課題や改善策などの情報を共有することである。

自分の所属するブロックの反省だけでなく、他ブロックの反省も全部員に伝えることで、ブロックの垣根を超えた情報の共有が可能になった。


もう1つは、反省会に参加した部員から「意見」をもらうことである。

反省会中に、全部員のスマホから送信された質問や意見をリアルタイムに見ることができるようにした。その場で意見を募り、どのブロックや役職に対してなのか、どんな意見なのかを明確にすることで「文句」ではなく「意見」として受け入れた


送信された意見のいくつかをその場で読み上げ、対象者にはなるべくその場で答えてもらった。

意見は数十件にもなり、その場で対応できなかったものに関しては、すべてリスト化して、チームのトップ陣全員で共有した。

無責任で一方的なものではなく、互いに責任を持って双方向に意見交換ができる機会を作ることで、部員の声を「意見」として活かすきっかけを作ることができた。

 

その他にも、解決しなければいけない問題はいくつかあった。

それらの問題解決のために、ただ言葉で言うよりも自分にも出来ることは行動で示していった。


「グラウンドの状況が悪い」と先生方から指摘があった際は、グラウンドの清掃を行っている1年生に、「ちゃんとやれ」と言うだけにせず、実際に自分も一緒にグラウンドの清掃を行った。

その考えに賛同してくれた副主将やマネージャー、その他の4年生も協力して一緒に清掃を手伝ってくれた。

例をあげれば切りがないが、様々な場面で沢山の部員に支えられて一緒に解決し、チームは変わっていった。

間違いなくチームは良い方向に向いていた。

 



そして迎えた2019年9月日本インカレ。





チームの真価は、2010年以来9年ぶり28回目の総合優勝という形で現れた

9年ぶり28回目の総合優勝


最後に

最後に実際の事例として、この1年間の取り組みの一部について書かせていただきました。これらのことをたった一人で実行して、チームを変えていこうとしたわけではありません。「自分がやってやる」という思いはありましたが、それ以上に「この仲間とならやれる」と信じていたことが、この1年間のチャレンジの1番の原動力であり、支えでありました。


主将としてこの1年間やってきたことは、必ずしも全てが結果に繋がったとは言えないと思います。結果として総合優勝という形でチームの力を証明する事が出来ましたが、順天堂大学陸上競技部にはまだまだ伸び代があり、更なる変化が求められていると考えています。主将の任期はたった1年間しかありませんでしたが、これまでの過去とこれからの未来について深く考えた1年間でした。これまでの伝統やその継承も大切ですが、後輩たちには、自分たちが信じたことを思う存分にやってほしいと望んでいます。何事にも変化というものは避けられないものではありますが、それをポジティブな意味での変化とできるかが、望む未来に繋がる鍵なのではないでしょうか。拙い文章ではありましたが、この記事を読んでくださった皆さんの行動のきっかけや、考えのヒントに少しでも役立てれば幸いです。


最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。

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