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箱根駅伝出場を目指して-関東学院大学陸上競技部が取り組むスポンサーシップ-〈後編〉

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2020年08月06日

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関東学院大学陸上競技部

関東学院大学陸上競技部のゼネラルマネージャー(GM)を務める上野敬裕さん。マネジメントの観点から特にチームの強化において欠かせない、資金調達の取り組みについてお話を伺った。前編では、スポンサー獲得の現状と地域に着目した具体的な取り組みを紹介した。後編では、スポンサーシップにおいて重要となるチーム内で持つべき視点や、理想とする大学スポーツの在り方についてお話いただいた。


後編

学生ができること 

-学生も関わりながらスポンサー集めをしていく点に関してはどのようなお考えをお持ちでしょうか。

今後の資金の集め方として、自分たちの中でどのように価値観を作って売っていくかは非常に大事なことだと思っています。例えば選手のバックグラウンドや人間性、パーソナリティを売るという視点が必要かと思います。

いま、箱根駅伝の駅女と言われている方たちがいて、小さな記録会にも一般の若い方達が応援に来てサインもらったりする光景を見るんですね。その背景にあるのは、強いか弱いかではなく、選手の人間性や陸上に対する姿勢に共感して、応援する思いが出てくるのではないかと思います。うちの選手に関しても、パーソナリティや人間性の部分に関して情報発信をしていくことで、それに共感してもらって応援してもらったり、スポンサーにつなげたりしていかないといけないなと思います。

 

競技面以外の人間性のといった情報発信に関して、どのように価値を作られているでしょうか。また、ご自身としても意識されていることは何でしょうか。

私自身、以前から戦略的広報が必要であると考えていて、以前箱根駅伝に6回出た時から10年以上経ってしまっていると、高校生たちが知らないですよね。顧問の先生でも、若い先生だと関東学院について知らないことが多いです。大学の部活動を知ってもらうためにホームページで発信するのも大事ですけれども、自分たちの資源の中でニュースになることを探すことがより大事だと思います。

先日、韓国からの留学生を迎えて大々的に記事にしていただいたのですが、彼は将来的には日韓スポーツの架け橋になりたいという思いで来てくれています。そういったストーリーを考えると、ニュース性のあるものも出てくるかと思います。自分たちの中にも、見せ方やストーリーの作り方によっては価値を見出せることがあると思うので、自分のチームの棚卸しをして、うまく組み合わせてバリューがあるものにしていくことを日頃から意識しています。

 

-ご自身でもTwitterやnoteでの発信をされていますが、いわゆるパブリシティや人材獲得、さらにはスポンサーにもつながっていくというような視点で取り組まれていらっしゃるのでしょうか。

やはり自分たちのことを知ってもらわないと何も始まらないので、価値を作っていくことは大事だと思います。また、自分自身としても、以前はブログをやっていましたが、Twitterは鍵付きで、あえてSNSの発信はやってきていませんでした。しかし、コロナの影響で対面での場面が少なくなってしまったので、自分や大学のことを知ってもらうためにはSNSでの発信をしていかないといけないと思います。そのような時代に乗り遅れてしまうなという思いもあって、SNSを始めたところもあります。

 

-選手も上野さんのSNSでの情報を見ながら、コミュニケーションをとるツールになっているのでしょうか。

色々聞いてくる学生もいれば、全く何も言ってこない学生もいます。Twitterをフォローしてくれてリツイートしたりする学生もいますね。自分の仕事のことはあえて学生に話してこなかったのですが、noteを読んでGMの仕事を知った学生もいたと思います。やはり発信することで理解度が深まったり、考えを知ることができたりします。本来ならダイレクトでコミュニケーションを取れれば良いですが、SNSを通じて理解してもらうのも大きなメリットだと思います。



大学部活動における課題

-大学の部活動が置かれている課題観について感じることはありますか。

印象として、大学とクラブが完全に切り離されてしまっているように思います。うちの大学でいうとスポーツ振興課が全部活をマネジメントしてくれて、コミュニケーションも取れています。しかし、大学によってはOB組織が強く、大学がほとんど関与していないという話も現状としてよく聞きます。それは良いところもあると思いますが、色々問題が起きた時に、大学が感知していなかったり関与しないというようなスタンスだと、高校から学生を預ける側の親御さんや顧問の先生も不安かと思います。まだ課題はありますが、大学とクラブが連携していくことが、大学スポーツでは大事なことかと思っています。

また、大学との連携やコミュニケーションは風通しが良くなってきているので、関東学院のスポーツも以前のような成績が出るのではないかと信じていますし、いいモデルとして見てもらってマネジメントの部分と競技面で結果を出していきたいと思っています。

 

-マネジメントを強化していくことが競技成績にも確実につながっているという観点で捉えていらっしゃると思いますが、まだまだ大学スポーツはマネジメントの観点での取り組みは弱く、競技力の向上が強くなってしまっている印象でしょうか。

そう思いますね。GMとしての6年を通して、だいぶGMというものが学内や学外でも浸透してきたと思います。しかし、このポジションでの活動をし始めた時は、学内の組織に行っても何かわかってもらえないという感じでした。マネジメントの重要性が大学スポーツの中で占めるものはまだまだ低いなと感じます。

アメリカのカレッジスポーツを見ると規模も大きく、アスレチックデパートメントがあり施設もすごいですね。スポンサーやアメフトの寄付・収益についても取り組んでいたりしますが、競技成績の追求だけではあそこまでいけないと思います。(日本の)大学スポーツではそのような視点が入ってきつつあるものの、まだまだ課題も多いですし、スポーツに対して文化が根付いていくのにも時間がかかるなと思いますね。やはりそういった視点で見る人が少なく、勝ち負けや成績が出たかだけの視点だけになってしまっている点が、スポーツが文化として根付いていくうえでの課題かなとは思いますね。

 

-学生は勉強が本分、学生スポーツの商業化についての賛否が問われることもありますが、学生スポーツでの資金獲得の必要性についてはどのように捉えていますでしょうか。

大学も基本は経営だと思います。大学として潤沢に資金があるわけではないと思うので、部活動の運営が大学の負担になるような活動ではいけないと思っているんですね。やはり強化の部分でお金がかかるのは大前提としてあることなので、大学に頼らずに社会とのコミュニケーションや社会と共生していくことで資金を得ることは、大学生のうちからやっていくべきだと思います。プロになったから始めるのではなく、大学生のうちからそういった視点を持って活動していくことで、将来的にも色々な部分につながっていくと思います。今後はそういった取り組みが必要かと思っています。

 

今後の展望

今後、10年、20年先の部活動運営を考えた時、「資金調達に関する課題解決」が、非常に重要と考えています。

大学側や寄付に頼るだけではなく、自ら資金を生み出す仕組み作りや、競技成績だけではない部の存在意義、価値観を創出していくことが大切ではないでしょうか。

また、「地域密着」「社会との共生」は絶対的キーワードで、学生自身が地域社会とのコミュニケーションをはかりながら、自ら行動していけるように導いていけたらと考えております。


終わりに

部活動運営における環境は部活動によってもさまざまですが、マネジメントに関する取り組みは競技力向上においても欠かせない要素である。
チーム内の資源を見渡して部活動の特性を理解し価値を生み出すことや、パーソナリティの面について積極的に発信していくことを通して、さまざまな切り口からスポンサーシップやパートナーシップに繋げていくことが可能になります。その過程では、学生自身も社会と関わりながら活動していくことが大切で、大学や社会との関係性を深めながら資金運用を目指していくことが、今後の活動の鍵となるでしょう。
各部が価値創造に向き合っていくことで、大学スポーツ全体が一歩ずつ発展していくことを期待したい。

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