ゴールキーパー30名と目指すGK王国~環太平洋大学~
サッカー部にゴールキーパーが30名も所属する大学がある。そこは首都圏や関西の大学ではない。九州や東海でもない。中国地方にある環太平洋大学(IPU)だ。しかも、まだ大学が創立して15年の比較的若い大学。
なぜ地方大学で30名ものゴールキーパーが集まるのだろうか?
今回、IPU・環太平洋大学体育会サッカー部でゴールキーパーコーチを務め、プロジェクトを推進している私清水が、詳細の取り組みについて紹介していきたいと思う。
沢山の高校生たちが自然と引き込まれてくる仕組みとして、また地方大学ならではのスポーツ振興策として、IPUゴールキーパーグループの取り組みが同様の環境でスポーツ振興へ向き合う方へ届くことを願う。
IPUゴールキーパープロジェクトの経緯
2007年にIPUのGK(ゴールキーパー)コーチに就任し、新しく新設した環太平洋大学に来てくれた1期生2名のGKとスタートした。
開学初年度のリーグは県学生2部リーグで優勝し1部へ。翌年はGK2名入部。県1部リーグで準優勝。中国大学2部リーグへ昇格。1期生で出場していた植田峻佑(八千代高校:現在J3テゲバジャーロ宮崎所属)の実績が認められ2部のチームからデンソーカップに出場する中国四国大学選抜に選出。その年は中四国が準優勝。
帰ってきた植田は「あの場所は独特ですごい経験になった。上には上がいる。刺激しかない」と語ってくれた。
その当時、自チームが勝つことをメインに考えていた私には、あまりピンとこなかった…
高校時代試合に出ているGKがあまり入学してこないという課題を乗り越えるため、3年目には経験値の少ないGKたちの強化を計画。開学4年目(完成年度)には天皇杯出場、総理大臣杯初出場とチームもGKとしても成果が出せた。そこには沢山のJ関係のスカウトの方々が視察に。
そこでデンソーカップに出場した植田の言葉とつながった。
まずは全国大会に出場して、名を広めないことには知名度は上がらず、高校生たちは地方の大学に見向きもしない。地方の無名の大学を有名にするには「結果と成果」が必要であると実感した。
そこで始まったのが「学内GK強化キャンプ」。
宿泊を伴うことで仲間意識を高め、GKとしてリーダーシップをとれる人材育成を目的にスタート。
その後、学生募集につなげなければいけないと考え、キャンプの内容をサッカー部YouTubeへ公開し情報発信を試みた。
(YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCY0rvGcFCW9tBsSieC5gZrw)
具体的には、
・GK専門コーチがいること(サッカーIQの構築)
・IPUGKとしてのベクトル合わせ
・専門知識のほかに動作解析を取り入れ・プレーの自己分析
・GKにおける障害調査をもとに怪我をしないGK育成・テーピングなどのレクチャー
など、様々な角度からGKを切り開いていき、GKである誇りを持たせる作業を実施。
このような活動が、自然と大学の広報にもつながった。
そのキャンプの成果もあって、当時在学中の吉崎宣弘(佐賀北高校:現びわこMIO滋賀所属)がヴィッセル神戸の強化指定選手に。
これをきっかけに環太平洋大学とは?という検索が増加し、入学してくる学生が口をそろえて「YouTubeを見てここに決めた」と答えるようになり、
①現在の取り組みの内容の発信
②選手としての4年後の出口(進路)が重要なことが明確になった。
そしてキャンプを10年続けて、現在30名のGKを有するサッカー部に発展。
そこで、これらの活動を拡大し、「IPUゴールキーパープロジェクト」が始まった。
再認識すべきポジションであるゴールキーパー
なぜゴールキーパーに着目するのか。それは、ゴールキーパーの価値をもっと向上させたいからである。
日本人の特性・国民性なのか、「一人だけユニフォームの色が違うのは恥ずかしい」「点を取られたらみんなに言われるのが嫌だ」「責任が重い」などのネガティブなイメージが日本にはある。
だが、ヨーロッパでは小学生たちに「キーパーしたい人?」と聞くと全員が手を上げると聞いたことがある。
「目立てる!チームを救ってやる!一人だけ手が使える!」とポジティブな考え方が植え付けられている。
実際、日本では、でキーパーの重要性を理解している指導者も増えてきている半面、いまだに「背が大きいから、太っているから、フィールドが下手だから」という理由でキーパーを選定しているチームも少なくないと聞いている。さらに、小学生年代では勝利主義が多く、点を取るために身体能力が高い選手をフォワードにすることが多い。
このようななかで、私はチームの中で一番身体能力が高い選手がキーパーを行うべきだと考える。
なぜなら求められることが一番多いから。単なる身体的な理由ではなく、そのポジションに必要な能力から選定する。それは、ゴールキーパ-も同じである。日本のキーパーのレベル向上には、このような指導者の考え方の転換やネガティブなイメージの払拭が必要である。そのために必要な環境整備。倒れても痛くない芝生の環境を増やすことも重要である。
このようなことがキーパーの価値を国内で上げることにつながると私は考えている。
キーパーといえばIPUを中国地方で実現へ
関東・関西(良い選手が集まる地域)にできないことの構築も視野に入れている。そのために大学の価値、サッカー部の価値、GKグループの価値を高める必要がある。
高校サッカー選手の誰もが目指す進学先は、やはり関東 関西、その次に東海、九州。そして最後に我々中国地方。つまり、若い力が入ってこない。そこが我々の弱み。まずその流れを変えたい思いは強い。その1歩がこのプロジェクト。
確かに、関東や関西には、リーグのレベル、試合の強度、Jのスカウトに見てもらえる頻度、プロに入団する選手数などでは劣る。しかし、練習環境・施設などはほとんど変わらない。むしろ我々のほうが良いかもしれない。さらに、我々は、関東や関西からすれば弱みとされる部分も強みに変えることができる。IPUには、関東や関西などレベルが高い都心の大学ではできない事がたくさんあるのだ。
そして、そのなかで私ができることといえば、キーパー王国を作り上げること。
「キーパーといえばIPU」を体現する。
実際に、全国大会などでは格上のチームと対戦し、攻め込まれることが多い。
だがその攻められることをポジティブに喜び(チャンス)に変えて活躍することを目指す。この考え方をしみこませる。
= 「キーパーといえばIPU」につなげる。
県内、地域でキーパー普及活動を行うことで、「教育者」を育成する。
子供たちに触れ合う実践の機会をクリニックで培い、教員になったときのキャリア経験の強みにする。
= 「キーパー(教育者)といえばIPU」に。
そしてキーパー30名で地域に愛される組織つくりを行い、プロ選手・指導者の輩出する。
そのことで、地方でも出口がしっかりしてる証明を示す。
「キーパーといえばIPU」となることで、中国地方を進路の選択肢になるようにしたい。
日本でNo.1の人気ポジションに!
「IPUゴールキーパープロジェクト」は現在、様々な目的や目標を持って進められている。
第1目的として(YouTube公開することについて)
・自分たちのトレーニングの見直し
・見られているという自覚・意識(各地元に帰ったときに声を掛けられるようです)
・9カテゴリーある中で、自発的にトレーニングメニューの作成ヒントに
第2目的として
・GKグループとして組織化を図ること
今は、立ち位置の確立のため、中国地方の中でグループの活動報告している。
→そして中国地域をリードできるGK組織へ。
①大学としてGKグループとして地域に貢献
・我々が技術レベルは別にして頑張っている姿を見てもらい何かを感じてもらいたい
・サッカー関係以外の人たちへのGKの楽しさを伝え、広げていきたい
・各チーム専属GKコーチが少ないなかで、様々なところでのメニュー抜粋(コメント欄で悩み解決)
②GKの価値を高めたい。日本でNo,1の人気のポジションに!
実際に、動画を作成するにあたって意識していることは、成功も失敗もすべて見せるようすること。
インカレに出るレベルのGKでさえミスをする。その姿を見せることで、親近感が沸く。動画を見てくれる人からすればハードルが下がることで、マネしやすくなる。
また、GKはミスが許されないポジションである。だから、他のGKチャンネルは良い部分(良いプレーしか)上げていないのかもしれない。だが、それでもミスも発信していくことが、プレーを改善しようと思うきっかけに繋がる。そのため、我々はミスも含め発信し続けていく。
プロジェクトと経て、実際の学生の反応や変化としては、選手一人一人がキーパーという誇りを持ち仲間意識が強くなった。また、YouTubeをうまく活用し動画(自分のプレー)を何度も見直し、自己分析できる選手も増えてきた。さらに、最近では、強化キャンプに他地域の大学生が参加してくれる事が増えてきた。
この流れで、いずれは大学GKトレセンなどを実施したいと考えている。私自身がサッカー協会のGKプロジェクトの一員ということもあり、県協会の事業とコラボして県・地域の普及活動を進め地域貢献も実施したいと考える。
プロジェクトはかなりたくさんの方々が視聴してくれている。自覚と責任をもって続けていきたい。
またYouTubeに限らず様々なSNSを活用して情報を発信していきたい。
最終的にはGKがよく育つ大学に。
ゴールキーパーといえばIPU!となりたい。
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